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インドネシアで(座敷ほうきの素材である)ほうき草の栽培地を広げるために山間部を視察する途中、黒い毛皮のようなものが大量に山積みされているのを見かけました。
そこで、現地の案内人に「あれは何か!」とたずねると「これはヤシ系の植物アレンという木からはぎとったものです。このように野ざらしになっていても腐らないので、資材としていろいろ使われています。水に濡れても大丈夫なので、海底の電線を保護するために使われたりロープを作ったり、色々なブラシを作ったりしてヨーロッパ方面に輸出している」との説明がありました。
さっそく、原料を精製している業者を紹介してもらい、黒い繊維を少し頂戴していただき、日本に送りました。
そして、日本とインドネシア工場でこの繊維を利用する商品開発に取り組み、1973年(昭和48年)、それまで日本になかった新素材の庭ほうきを開発し、「ニワニワ」と命名して発売したのです。
当時、庭ほうきといえば、シダほうきと呼ばれている硬く、粗い赤茶色した穂のものしかなかった時代でしたが、この「ニワニワ」は新たな新素材庭ほうきとして、業界に旋風を巻き起こすこととなりました。 |

アレンの木からとった
黒い繊維の山
(インドネシア)

奥:赤シダほうき
手前:ニワニワ
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現地では、アレンの木が自生している森林に案内してもらいました。アレンの木は成長すると約10mにもなり、幹の直径は50cmぐらいあります。黒い毛皮のようなものは幹に巻きついて、日本の棕櫚の繊維に似ていました。一回皮をはぎ取っても5〜6年経つと成長した幹にまた繊維が巻き付き木の寿命が続く限り何度でも採集できるとのことでした。
また、花の茎の付け根部分にキズをつけると樹液が流れ出して、この樹液を採取して黒砂糖が作られていました。また、アレンの葉っぱを屋根材として使っている民家もありましたがこのアレン木は自然界に点在する樹木で無限にあるわけではないため現地でも貴重な天然資源として大切にされていました。

静岡県浜松市にある本社と打ち合わせの上、インドネシアで庭ほうき作りにおいて、最初に手がけたのは、座敷ホーキほうきの時同様、原料が安定確保できる体制を作ることでした。
良質な繊維を採集する上で一番大変なのは、アレンの素材をすいて一本一本の繊維に仕上げる精製作業です。ブラシの材料となる繊維をすいているところを見学しましたが、手作業で大変な作業風景でした。金属製のくしの上を何度もすくのですが、その際に多量のゴミとホコリが舞い上がるので、工場の中ではできないとのことでした。
従来のシダ製の庭ほうきより、使いやすくて丈夫なものを作るためには現地ですでに作られているブラシ用の繊維より太くて長い繊維だけを集めることが条件でした。ブラシは短い繊維を使用するため、細く柔らかい繊維が混じっても製品の機能上何ら支障がないのですが、庭ほうきはブラシ用より4倍も長く太さも揃った繊維を必要とされていましたから、精製作業には一段と手間がかかったのです。
また、これは重労働で皆が嫌がる仕事でした。原料は目方で仕入れるため、繊維束の真ん中に短い繊維を入れたり水を含ませた繊維を混ぜて目方を重くして持って来る業者もいて、現地の取引業者との信用関係を確立するまでには一苦労しました。
すき作業の後は、繊維の長さによって50cmから1mの間で3段階に選別し、繊維の両端は長さが不揃いになるため切り落として、太く揃った部分だけを原料として使うことにしました。我が社の基準で精製すると、庭ほうきに使える原料は全体の30%ぐらいで70%は廃棄としなければなりませんでした。

ほうきの生産工場は都市郊外に建設しましたが、ほうき草の栽培はその工場から車で6時間ぐらい移動時間がかかる山間地でした。付近にはホテルもないため、当社社員は現地の住まいを借りて生活をしていました。当時は電気、水道などが整備されていないため、現地の方同様、風呂やテレビのない生活となったのです。
休日には辞書でインドネシア語の勉強をしたり、現地の方とゲームを楽しんだりしたとの記録も残っています。指導員たちの一番の楽しみは、時々日本から送られてくるインスタントラーメンであったそうです。
こうして、現地の人々と共に生活をしてほうきを作り、さらに新たな可能性を求めて新素材のほうきの研究を進めていったのです。
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アレンの木

作業風景:繊維をすく

作業風景:繊維を束ねる
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シダほうきと呼ばれる庭ほうきは、パルミラというヤシの木の葉柄から採集した繊維で作られており、業界ではこの繊維をシダと呼んでいます。一方、我が社が見出した黒い繊維の穂は、それまで日本になかった素材でした。
そのような状況で、原木の名前をそのままパッケージに材質表示すれば、同業他社に原料の入手先がすぐにわかってしまい、類似品が作られることは明らかでした。他社に原料の原産地を知られないようにいろいろと考えた結果、マレー語で「黒い」を意味する「ヒタム」と、「繊維」の「ファイバー」から「ヒタムファイバー」と命名しパッケージに表示しました。
そして、この「ヒタムファイバー」を使ったほうきの商品名は「ニワニワ(庭掃除に最適であることをアピール)」と命名されました。
従来のシダほうきの繊維数約1000本に対して「ニワニワ」は約4000本もあり、細かい砂ホコリもしっかりと掃くことができ、しかもシダほうき特有の、穂の跳ね(穂が変形してしまうこと)がほとんどない新しい庭ほうきとして、いよいよ市場デビューとになったのです。

発売された「ニワニワ」ですが、今までにないしなやかな掃き心地で、細かな砂ホコリまでしっかりと掃くことができるという特徴が販売店様に早々に認められ、従来のシダほうきとは違った高級庭ほうきとして店頭に並ぶようになりました。
当時、都営バスの運賃40円(07年210円)の時代に「ニワニワ長柄」860円「ニワニワ短柄」580円という高額で販売されていたにもかかわらず、「ニワニワ」は飛ぶように売れていったとのことからも、当時の人気ぶりがうかかがわれます。 |

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